映画レビューサイト「coco」が2023年4月でサービスを終了。TwitterのAPI停止が原因

映画ニュース

日本には多くの大手の映画レビューサイトがあり、それぞれ独自の持ち味を持っています。そんな中、Twitterと連携することで、感想を集約してリアルタイムで反映し、利用者も短い感想コメントを残せることで定評のあった「coco」という映画レビューサービスが、2023年4月末をもって終了すると公式が発表しました。2023年4月14日に突然の報告となったこの今回のサービス終了。その理由は近頃頻発しているTwitterの突発的な仕様変更でした。

FULLMUVIVERSE オリジナル・ニュース(深堀り)

「coco」とはどんなサービス?

一般的なユーザー投稿型の大手の映画レビューサイトは、ユーザーがアカウントを作成し、個別の作品ごとに感想コメントを入力するというものが普通です。しかし、「coco」はTwitterでのログインを前提としており、Twitterユーザーに向けて特化した映画レビューサイトでした。

ユーザーは自身のTwitterでログインし、各作品の感想を入力できます。すると連携しているので自分のTwitterアカウントにもその感想コメントが連動して投稿されます。Twitter内でどんな感想があるのかという情報も集約したりと、Twitterを使って映画情報を知りたい人や感想で交流したい人にとってはうってつけのサービスでした。

Twitterには映画のファンはたくさんおり、それぞれで感想を語り合っています。しかし、それらをまとめて把握するのは個人では大変です。「coco」はそのサポートになるサービスでもあり、Twitterでこの映画がどんな感想で盛り上がっているのかをひと目で理解することも簡単で、多くのユーザーに支持されていました。

「coco」は「株式会社イード」によって運営されており、映画の感想/評論/評価について、評論家や業界関係者の意見ではない世間の生の声をダイレクトに提供するという新しい観点で、2010年2月にサービスをリリースしていました。「株式会社イード」は他にも「総合ゲーム情報 インサイド」「総合アニメニュース アニメ!アニメ!」「最速ゲーム情報 Game*Spark」「映画・セレブ最新情報 シネマカフェ」「アニメ専門誌 アニメディア」「IT・ビジネスニュース RBB TODAY」など、多くのメディアを運営しています。

突然のサービス終了とTwitter問題

その「coco」の突然のサービス終了の報告。2023年4月14日時点では公式サイトには、以下のようなお知らせが掲載されています。

平素よりcocoをご利用いただき、誠にありがとうございます。

この度、Twitter社のAPI仕様の変更により、ご利用者の皆様によるcocoへのログイン・新規ツイートの取得が不可能となりました。
誠に残念ではございますが、4月末日をもってcocoのサービスを終了することといたしました。ご利用者の皆様には突然のご報告となりましたこと、お詫び申しあげます。

なお、ご利用者の皆様が記録されていた鑑賞データにつきましては、リクエストに応じてエクスポートできるように準備中です。詳細につきましてはまたご報告させていただきます。
ご不明点などございましたら、以下問い合わせ窓口よりお問合せください。

長きにわたり、cocoをご利用いただき誠にありがとうございました。

引用:coco

理由は上記のお知らせにも掲載されているとおり、「Twitter」のAPI仕様の変更が原因です。

Twitterはイーロン・マスクが買収によってその企業のトップについてからというもの、混乱を極めていました。サービスの在り方は大きく変わり、広告をだす企業も離れており、その独裁的な運営には識者からも批判が殺到していました。ライバルとなる他のサービスのTwitterでのリンク掲載を妨害するなどの露骨な情報規制も行われるようになっていました。

最近になって急にイーロン・マスクが発表したのがTwitterのAPI仕様変更です。APIというのはTwitterのデータなどを外部から幅広く利用するための仕組みのことで、これによってTwitterのサービスにアクセスし、情報を抽出したり、投稿したりすることができるようになっています。Twitterと連携したサービスを作るのに欠かせないものです。

イーロン・マスクはこのTwitterのAPIの従来あった「無料」利用枠を大幅に修正し、多くの機能を有料化し、それもかなり高額な利用料を求めることを4月に本格的に明らかにして決定しました。2023年2月にAPIの無料提供を終了することを発表したのですが、詳細はわからずじまい。3月30日には無料プランに1カ月あたり1500ツイートまでの制限をかけ、企業向けプランは月額4万2000ドル(約550万円)になる新しいAPIプランを公表。やっと4月に着手できるレベルの情報が揃い出すも、その4月も予期せぬ対応が連発することに…。

とくに無料APIだけでなくTwitterアカウントを利用した外部サービスへのログインも遮断され始め、多くのサービスに混乱が拡大しています。すでの複数のサービスが終了を余儀なくされたり、大きなサービス変更に取り組まざるを得なくなっていました。

例えば、Twitterに伏字や長文を投稿できる「fusetter(ふせったー)」は機能を変更しながらのサービス継続を発表しています。いいねの情報が取れなくなってしまうなどの、どうすることもできない仕様変更は受け入れるしかない状況です。

「coco」でも4月初めにTwitterでのログインや情報取得ができなくなり、サービスが成り立たなくなってしまいました。「coco」はTwitter無しでは成立しないサービスであり、これは致命的な問題でした。基本的に多くの機能がTwitterがあることで動いているものばかりです。

結局、現行のサービスの維持は不可能と判断したようです。新しい映画レビューサイトが作られるのかは不明です。

 

終了する「coco」が残した最後の姿

「coco」のサービスが終了すれば、サイト自体も無くなる可能性は高いと思われます。

終了する前にどんな情報が「coco」に掲載されていたのか、その記録をここにも一部まとめておきます。

サービス終了直前、「coco映画レビュアー 満足度ランキング」で1位をとっていた映画は『マッシブ・タレント』で「100%」評価でした(2023年4月14日時点)。

2023年は他にも『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』や『モリコーネ 映画が恋した音楽家』、『対峙』といった映画が「100%」の満足度を記録していました。

ユーザー投票によって決まる映画ランキングも公表しており、2022年は以下のとおり(参加した審査員は334名)。

1位『トップガン マーヴェリック』1277point 165人
2位『RRR』1019point 133人
3位『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』736point 97人
4位『THE FIRST SLAM DUNK』
5位『NOPE/ノープ』
6位『さかなのこ』
7位『コーダ あいのうた』
8位『THE BATMAN -ザ・バットマン-』
9位『ハケンアニメ!』
10位『シン・ウルトラマン』
11位『恋は光』
12位『すずめの戸締まり』
13位『ケイコ 目を澄ませて』
14位『TITANE/チタン』
14位『さがす』
16位『天間荘の三姉妹』
17位『Ribbon』
17位『ブレット・トレイン』
19位『カモン・カモン』
20位『ある男』
掘り出しモノ賞
1位『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
2位『PLAN75』
2位『ハケンアニメ!』
2位『ブラック・フォン』
2位『教育と愛国』
2位『貞子DX』
2位『LAMB/ラム』
2位『きさらぎ駅』
2位『この子は邪悪』
2位『そばかす』

「Twitterから映画の評価が分かる&映画の鑑賞記録が残せる」という特徴を持った日本のサービスは無くなってしまいましたが、今後も他のサービスでもTwitter関連で仕様変更があるかもしれません。Twitterでのログインをすることは控えるようにし、他の手段でのログインに変更するといいでしょう。

各自がTwitterにログインして自分で映画の感想をツイートすることはできます。ただし、Twitterのサービス運営は不安定になっており、今後も何が起きるのか、先行きは全く不透明です。