映画宣伝を行う有限会社DROPの求人に批判殺到!「水商売経験者の女性」「働き方改革は不要と思う方」

映画ニュース

日本の映画業界でパワーハラスメントや女性差別など毎年さまざまな問題が浮き彫りになっていますが、2021年11月22日、また新たな問題が指摘されました。指摘したのは「Japanese Film Project」という日本映画業界のジェンダーギャップ・労働環境・若手人材不足を検証し、課題解決するために調査および提言を行う非営利団体です。その問題の渦中にいたのが「有限会社DROP(有限会社ドロップ)」という企業であり、その有限会社DROPの「映画宣伝パブリシスト」に関する求人に批判が殺到しました。

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問題の有限会社DROPの求人の中身は?

問題の有限会社DROPの求人はどんな中身なのか。それは有限会社DROPの公式ウェブサイトの採用に関するページに掲載されたものでした。

以下に一部を引用します。

【職種】
昨今、人気がなくなっている映画宣伝パブリシスト
【仕事内容】
映画宣伝全般に関わる業務
【勤務地】
再開発で、スゴイことになっている渋谷
【待遇】
年齢・経験などを考慮せず、当社規定により一律年俸300万円(税込)。
気が向いたときに決算賞与あり
【雇用形態】
正社員・社会保険完備・交通費(年俸に含)
応募資格 大卒以上・新卒不可 22歳~26歳までの方
学校で映画の配給・広報(マーケティング)コースを学んだ方、優先。
東京23区内にお住まいの方、優先。
水商売経験者の方(女性の方)、優先。
察知力のある方・地頭の良い方、優先。
好きな業界での仕事に、”働き方改革は不要”と思う方、優先。

出典:有限会社DROPの採用状況ページ https://www.dropinc.jp/recruit.html(ただしリンク切れとなっています)

ひとめ見てわかるほどに明らかにおかしな求人内容に思えるものです。全体的にふざけて書いたのではないかと感じるような、真面目さが全くない求人。企業としてのモラルは全く感じないと言われても無理はないでしょう。

とくに「水商売経験者の方(女性の方)、優先」は、仕事内容である「映画宣伝全般に関わる業務」とどう関係があるのか意味不明となっており、さらには「気が向いたときに決算賞与あり」「好きな業界での仕事に、”働き方改革は不要”と思う方、優先」など、労働基準法などの法令順守を考える気がないかのような文面も見受けられます。

この「水商売経験者の方(女性の方)、優先」はアーカイヴを見ると5年以上前から記載されていることがわかります。

そもそも求人は好き勝手に作成していいわけではありません。求人に関係する法律を守る必要があります。具体的には、労働基準法、男女雇用機会均等法、雇用対策法、職業安定法などです。これらの法律によって、最低限明示しなければならない労働条件等があったり、また求人票の作成で禁止とされる表記(例:性別を制限する表記、年齢を制限する表記、給与や実態とは異なる表記)も存在します。

これらの法令を守ることは、求人を行う企業としては欠かせないことです。

有限会社DROPとは?

この批判を集めた有限会社DROPはどういう会社だったのでしょうか。

会社の公式ウェブサイトを確認してみると以下のようなことがわかります。

東京都渋谷区鶯谷町に存在する企業で、平成16年4月に設立されました。

代表取締役社長の名前は「濱口知俊」。平成14年4月から「(株)オフィス・シロウズ」に入社し、平山秀幸監督作品『笑う蛙』(’02)、冨樫森監督作品『ごめん』(’02)、中江裕司監督作品『ホテル・ハイビスカス』(’03)、熊切和嘉監督作品『アンテナ』(’03)、などに幹事プロデューサーとして関わっていたとプロフィールに記載されています。取締役の名前は「濱口可奈子」で平成13年4月からフリーパブリシストに転身し、熊切和嘉監督作品『空の穴』 (’01)、李相日監督作品『BORDERLINE』(’02)、ニック・カサベテス監督作品『ジョンQ』(’02)、アレハンドロ・アメナバール監督作品『アザース』(’02)などの配給宣伝を担当したとこちらもプロフィールに記載されています。

取引先として、公式ウェブサイトには以下の企業が列挙されています。

松竹株式会社/株式会社シネカノン/株式会社KADOKAWA/株式会社ファントム・フィルム/東京テアトル株式会社/株式会社ショウゲート/ミコット・エンド・バサラ株式会社/株式会社ニッポン放送/株式会社メディアボックス/株式会社エスピーオー/ギャガ株式会社/日本出版販売株式会社/株式会社アートポート/パラマウントジャパン株式会社/バンダイビジュアル株式会社/株式会社オフィス・シロウズ/東映株式会社/株式会社CKエンタテインメント/日活株式会社/株式会社アドギア/株式会社角川メディアハウス/株式会社電通/株式会社ポニーキャニオン/株式会社ザナドゥー/株式会社クロックワークス/有限会社CQNエンタテイメント/AMGエンタテインメント株式会社/株式会社ファインフィルムズ/株式会社スキップシティ/株式会社トルネード・フィルム/ブロードメディア・スタジオ株式会社/株式会社P2/株式会社東急レクリエーション/ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社/有限会社伊藤さとり事務所/有限会社キコリ/庄内映画村株式会社/株式会社ノースシーケーワイ/アスミック・エース株式会社/東宝東和株式会社/ソニーPCL株式会社/東宝アド株式会社/東宝株式会社/ビジョンライツ株式会社/東映アニメーション株式会社/株式会社ヨアケ/株式会社トランスフォーマー/株式会社アンプラグド/株式会社ティ・ジョイ/株式会社読売テレビエンタープライズ/株式会社トムス・エンタテインメント/株式会社SDP/株式会社ドリームキッド/株式会社毎日放送/株式会社トライストーン・エンタテイメント/株式会社オフィス北野/株式会社東北新社/日本財団/東和ピクチャーズ株式会社/ワーナーブラザースジャパン合同会社/株式会社ロングライド/株式会社ソニーピクチャーズエンタテインメント/株式会社ピクス/株式会社ガイエ/株式会社フラッグ/株式会社サンライズ/株式会社IoTスクエア/三井不動産株式会社/株式会社キノフィルムズ/株式会社モボ・モガ/イオンエンターテイメント株式会社/ARIプロダクション株式会社/株式会社プレシディオ/株式会社アカツキ/株式会社クオラス/株式会社扶桑社/株式会社シンカ/カルチュア・エンタテインメント株式会社/エイベックス・ピクチャーズ株式会社

2021年11月22日時点で公式ウェブサイトのトップページでは『トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』や『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』の2つの作品が宣伝されていました。

企業名の由来は以下のとおりだそうです。

映画「青い春」の主題歌であったミッシェル・ガン・エレファントの「ドロップ」という曲に 強い影響を受けたと同時に、ドロップアウトギリギリの「尖った仕事」をしたいという意味で、 「DROP.」とドットを付けている。

なお、有限会社DROPの公式ウェブサイトでは問題が指摘されて以降、すぐにトップページに以下の謝罪文が掲載されました。

この度は、弊社採用情報につきまして、皆様およびご関係者の皆様に
ご迷惑およびご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません。
表現や条件など不適切な内容であったと猛省いたしております。
今後、改めて倫理観および労働条件等の見直しをし、改善して参りたいと思います。
改めて、深くお詫び申し上げます。

しかし、この謝罪文にさえも責任者の名前などの明記は一切なく、しかもこの謝罪文だけが表示されたトップページ以外のページは一切表示されなくなってしまっているため、責任逃れではないかとの声もネット上ではあがっています。この謝罪文だけでは、会社の誰かが責任をとったのかさえも現状は不明です。

問題の指摘によって、多くの批判の声が寄せられている今回の求人問題。日本の映画業界がなぜこのような求人を行っている会社と取引をすることを常態化させていたのか、そうした全容の解明がなされなければ、同じ問題は何度も繰り返されるのではないのでしょうか。

今回の問題を取り上げた「Japanese Film Project」のように、映画業界を改善するべく立ち上がっている人々もいます。もし不適切な求人を見かけた場合は、SNSなどで声をあげてみるのもいいかもしれません。