令和のデビルマン? 映画『大怪獣のあとしまつ』が公開初日から大酷評でネットが盛り上がる

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新型コロナウイルスの感染者数が各地で天井知らずで増加していく中、映画館は通常どおり営業しています。そして2022年2月4日、『大怪獣のあとしまつ』という日本映画が新たなに公開されたのですが、これが公開初日から思わぬ反応で迎えられました。好評だと製作者もほっと安心でしょうが、残念ながら本作に対する観客の反応は芳しくありません。それどころか酷評する勢いでインターネットは盛り上がりをみせました。

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話題となった『大怪獣のあとしまつ』

その話題となった『大怪獣のあとしまつ』という映画はどんな作品なのか。ネタバレ無しで簡単に説明すると、本作はオリジナル作品であり、明確な原作はありません。しかし、誰もが知っている題材を扱っています。それは怪獣。

一般的に怪獣が暴れる映画というのは、その怪獣が街に出没して大暴れし、街が破壊され、そして正義となる人間の部隊やヒーローが現れてその怪獣を倒して、めでたしめでたし…というのがオチです。それで映画は終わります。

しかし、この『大怪獣のあとしまつ』は、その怪獣を倒した後に着目するという新しい視点で物語を生み出しています。つまり、倒された怪獣の後始末は誰がどうやってしているのか?…という部分です。これをあえて映像化してしまったのが本作『大怪獣のあとしまつ』。今まで多くの怪獣映画に親しんできた日本人でもあまり考えようとしなかったこの部分を掘り下げていく本作はアイディアで勝負しているとも言えます。

本作の怪獣は「希望」と呼ばれており、人類にとって貴重な資源が眠っていると言われ、今後の希望に繋がる存在として注目されているという設定があります。最全長は380m。東京ドームの1.5倍であり、そう簡単にこれを処分することはできません。まさに至難の業、かつてないミッションと言えるでしょう。

その斬新な『大怪獣のあとしまつ』は出演している俳優も豪華です。主演は「Hey! Say! JUMP」の山田涼介。土屋太鳳、濱田岳、オダギリジョー、西田敏行、菊地凛子、二階堂ふみ、染谷将太などが共演し、この前代未聞な世界観を盛り上げます。

出演している土屋太鳳さんは、メディアのインタビューで「三木監督は、セリフの間や軽快なテンポ感をとても大事にされる方なんです。監督が手がけられた『シティボーイズ』を自宅で見ながら、その”独特のテンポ感”を理解しようと努力して、撮影現場に臨みました」と意気込みを語っています。

監督は『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』の三木聡監督が手がけ、巨大怪獣の死体処理を題材に描いた空想特撮らしく、「平成ゴジラ」シリーズや「ウルトラマン」シリーズの若狭新一が怪獣造形を担当し、かなり本格的なチームが揃っています。

公式サイトでも「ドリームタッグ」と明言しており、松竹と東映が組むという異例さもあり、自信の高さが窺えます。

「各界から絶賛の声!」として公式サイトでは以下のような著名人のコメントが掲載されています(全て 公式ウェブサイト から引用)。

阿部サダヲ(俳優)
もう!豪華!好きな役者の方々が次々出てきてずっとニヤニヤしていました。こんなに沢山の「希望」が詰まってる映画はありがたいです。

佐野史郎(俳優)
怪獣映画に災害や戦争の象徴としての側面があるのだとしたら、怪獣のあとしまつは、現実の問題として、さらに観るものにその厳しさをつきつけるだろう。怪獣に本気で向き合わなければならないと教わる。

井口昭彦(美術監督)
今の政治批判も有り、大人向けの作品としてはサイコーの作品です。

井上淳哉(漫画家)
僕のような、子供の頃怪獣映画の楽しさを刷り込まれた大人は、理屈が育ってなかなか満足できる怪獣映画に出会えません。そんな人に薦めたい斬新な切り口の本気の怪獣映画です。

尾上克郎(特撮監督)
激しく斜めってるけど、紛れもない正統派の怪獣映画。脳が溶けそうになって気がついたら三木ワールドの虜になってしまいました。

田原総一朗(ジャーナリスト)
大怪獣の後始末を巡ってどの省庁も責任を取るのが嫌でみっともなくなすりつけ合う。自己責任論が加熱しすぎて、責任を取る事が怖くなってしまった今の社会を風刺している。

笠井信輔(フリーアナウンサー)
あのあとゴジラはどうなったのか?その答えがここにある。庵野ワールドをちゃっかり拝借してエンタメ要素たっぷりに、これはある意味「シン・ゴジラ」の“続編”だ!

影。/かげまる(ゲーム実況YouTuber)
豪華俳優陣が織り成すリアルな人間模様とジョークのエッセンス、驚きの連続に目が離せません!

いざ公開されると…

そんな『大怪獣のあとしまつ』。2022年2月4日にいざ公開されると大絶賛…とはいきませんでした。それどころか酷評の勢いが強く、ネットではあまりの酷さを語る感想コメントが相次ぎ、ちょっとした祭り状態に。SNSでもトレンド入りする事態になり、製作者にとっては嬉しくないかたちでの話題となりました。

基本的に公開初日は、その映画が好きな人や、もともと映画鑑賞が趣味な人が見に行くことが多いです。なので話題性という意味では最も勢いが増しやすいタイミングであり、ここで話題をとれるかどうかが映画のビジネスには欠かせません。しかし、『大怪獣のあとしまつ』はマイナスの意味での話題のまとになり、これはこれで同日公開のどの作品よりもダントツで話題にはなったのですが、かなり複雑な心境になる事態。タイトルを世間に広めるという宣伝にはなっていますが…。

簡単にその観客の反応を抜粋すると「邦画の悪いところの全部詰め合わせ」「とにかく脚本がヒドイ」「ギャグがあまりにもすべっていて見ていられない」「俳優が可哀想になってくる」と情け容赦のない低評価が飛び交っています。肯定的な意見としては包容力を持って受け止めるという随分と達観した人のコメントも見られますが、だいたいはネガティブな評価が多めです。

映画のレビューサイトでも軒並み評価は低く、公開初日の時点で「映画.com」では「2.4/5.0」、「Filmarks」では「2.4/5.0」、「Yahoo!映画」では「2.1/5.0」となっています。

ネットでは、公式ウェブサイトの著名人のコメントの中にもよく見ると微妙な反応を述べている人がいるとして話題になったりもするなど、すっかり『大怪獣のあとしまつ』は愛すべき駄作の扱いになりつつあります。

『大怪獣のあとしまつ』は別に公開前から不評だったわけではありません。原作がないこともあり、判断しづらいので事前に評価が予想されることもありませんでした。ということで面白半分でわざと低評価をつけまくるという嫌がらせは公開前にはほとんど確認できません。むしろここまで酷評で突出して話題がでるということが予想外だったという意見もあるほどです。

とくに「クソ映画」などと罵詈雑言も飛んでしまう本音が遠慮ないSNSですが、本作を表現するうえで「令和のデビルマン」というワードもトレンドになっていました。

これは『デビルマン』という2004年に公開された日本映画があり、その内容が酷いとしてネットでネタにされた映画でもあり、ダメな映画の代名詞のように扱われています(それでも中には映画『デビルマン』が好きな人もいるでしょう)。『大怪獣のあとしまつ』は「令和のデビルマン」を襲名してしまったことで、今後はダメな映画の象徴としてずっと語り継がれていくのでしょうか。

映画にとって評価は大事です。でも他人の評価と自分の評価は違います。『大怪獣のあとしまつ』がどんな内容なのか。それが気になった人は映画館に足を運んでみるといいでしょう。そして自分で感想をコメントして、インターネットの世界にこの映画の存在を知らしめることに貢献してもいいですし、そっと記憶に蓋をするのでも構いません。

『大怪獣のあとしまつ』は日本全国の368館以上で公開中です。