日本ジャーナル出版「まいじつ」が『ハリーポッター』俳優を「過激な分離主義」「路上生活者」と誹謗

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映画俳優についての情報は日々あちこちで飛び交っています。それだけ世間の関心が高いことの現れでしょう。それらを報道するメディアもたくさん存在します。そんな中、日本ジャーナル出版が運営するメディア「まいじつ」が、日本でも大人気の映画シリーズである『ハリー・ポッター』に主演する俳優を「過激な分離主義」「路上生活者」などと書き、その内容に批判の声があがっています。

FULLMUVIVERSE オリジナル・ニュース(深堀り)

エマ・ワトソンは過激な分離主義?

イギリスの作家J・K・ローリングによって著された7巻のファンタジー小説「ハリー・ポッター」。73の言語に翻訳された本シリーズの全世界累計発行部数は2018年時点で5億を突破し、その人気は世界的な社会現象となり、子どもも大人もその魔法の世界に魅了されました。

映画化された『ハリー・ポッター』は2001年に『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開され、2011年に『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』でもってシリーズを終えました。しかし、この映画に主演した、ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフ、ロン・ウィーズリー役のルパート・グリント、ハーマイオニー・グレンジャー役のエマ・ワトソンは、子役として当時は無名だったものの瞬く間に大人気のスターになりました。

映画が終わった後も3人は俳優業を継続。映画界で活躍を見せています。

そして20周年となる2021年に『ハリー・ポッター20周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ』という特別番組が制作され、久しぶりにあのキャストや監督などが顔を揃えて当時の思い出を振り返るという出来事もあり、ファンを喜ばせました。この『ハリー・ポッター20周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ』は日本ではU-NEXTで配信されています。

それに合わせて、日本ジャーナル出版が運営するメディア「まいじつ」でもそのハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフ、ロン・ウィーズリー役のルパート・グリント、ハーマイオニー・グレンジャー役のエマ・ワトソンについて紹介がなされたのですが、その記事の内容が酷いのではないかと批判されたのです。

記事のタイトルは「『ハリポタ』3人組の“変貌”に驚きの声!面影ない主人公、過激化するヒロイン…」となっており、記事公開日は「2022年1月3日」。

以下に一部を引用します。

エマ・ワトソンに関しては、もはや説明不要の活躍だろう。多くの子役が消えていく中、彼女はその後も常に第一線で活躍。2017年には実写版『美女と野獣』でベルを演じる大役を務めている。だが輝かしい功績の一方、フェミニズム運動に参加し徐々に過激化するなど分離主義的な一面も。自身をスターに押し上げた「ハリー・ポッターシリーズ」作者のJ・K・ローリングがトランスジェンダー差別発言をした時も、恩人に楯突くように批判側に回った。2021年12月27日には、自身のインスタグラムで反人種差別歴史に名を残したデズモンド・ツツ元大主教を追悼するなど、やはり思想性を前面に押し出している。

エマ・ワトソンの俳優業を褒めているのかと思ったら、なぜか過激な思想の持ち主であるかのように煽る文面が目立ちます。

さらにダニエル・ラドクリフについては以下のような記述です。

路上生活者のようなヒゲを蓄えたラドクリフ

確かに現在のダニエル・ラドクリフには髭が生えていますが、一般的に髭が生えている人に対して「路上生活者」呼ばわりするのは失礼なだけで、それは極めて常識的な認識だと思います。

実際の俳優はどうなのか?

実際の俳優は何をしているのでしょうか。「まいじつ」の記事どおりなのでしょうか。

エマ・ワトソンは数多くの映画に出演していますが、俳優業以外にもたくさんの活動をしています。

国連でも活動しており、「UN Women」というジェンダー平等を実現して女性の地位向上を目的とする組織で意欲的に活動。「He For She」というキャンペーンでは男性の参加を促し、全員が一丸となって世界的な不平等を是正しようとスピーチし、多くの人から称賛を受けています。

このような活動を見ればわかるとおり、全く「分離主義的な一面」というものは見当たりません。なお、「分離主義」というのは、例えば特定の国に属している集団が独立を求めるなど、そうした分離独立を目指すことを指します。

「ハリー・ポッター」の作者であるJ・K・ローリングがトランスジェンダー差別発言で批判されているのは事実です。しかし、その差別に対してエマ・ワトソンを含む多くの俳優たちがJ・K・ローリングの発言に同意しない姿勢を示しており、それもまたエマ・ワトソンの誠実さを示すエピソードと言えるでしょう。「恩人に楯突く」ようなことはしておらず、『ハリー・ポッター20周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ』の特別番組内でもこのような役者の機会を与えられたことに関して涙を流しながら感謝の意を示す場面もあります。

デズモンド・ツツ元大主教を追悼した件については、相手は著名人ですし、亡くなった人を追悼するのは普通です。とくに政治的な思想などは関係ないものです。たいていの人は亡くなった人を悔やむときに政治思想を気にしたりはしないでしょう。ちなみにノーベル平和賞受賞者であるデズモンド・ツツ元大主教の国葬の際は、エリザベス女王やバラク・オバマ元大統領も追悼の言葉を寄せています。

以上のことから「まいじつ」で示されているエマ・ワトソンに関する内容は誇大な過剰表現、もしくは誤解を招くミスリードが多分に含まれていることがわかります。

過剰に煽り立てるメディアの実態

そもそもこの「まいじつ」というメディアはどういう媒体なのか。記事・コンテンツ制作をしているのは「株式会社日本ジャーナル出版(所在地:東京都千代田区内神田2丁目8番4号)」であり、広告管理・サイト保守・コンサルティングは「INCLUSIVE株式会社(所在地:東京都港区南青山5-10-2第2九曜ビル3F)」であるとウェブサイトには明記されています。

サイト内ではメディアの説明として以下のように記されています。

まいじつとは、芸能界のちょっとした裏情報、著名人の隠れた素顔、ネットで話題の泣ける話・笑える話などを「ちょっといい話」「実は○○な話」として紹介するWEBメディアです。

まいじつのコンテンツは、総合週刊誌「週刊実話」を刊行する株式会社日本ジャーナル出版または情報提供者に帰属しています。

他の記事を読むと、他にも過剰に煽り立てるような表現が目立つものが多く、そうやって読者を惹きつけてアクセスを狙うことが目的のようです。

これ以外にも「『鬼滅の刃』のテレビアニメが入浴シーンによって物議を醸している」など、対立を煽るような根拠不明の記事を量産し、たびたび炎上の火種を作っています。ウェブサイトとしては炎上すればアクセス数が増えるのでそれで問題ないと思っているのか、情報の精度や検証はほぼありません。

残念ながらこうした過剰に煽り立てるメディアは日本にはたくさん存在しています。過激な情報ほどアクセスを集めやすいからです。

しかし、今回のように俳優のキャリアや個々の実績を正しく追っていけば、その過剰に盛られた情報が誤っていることもすぐにわかります。エマ・ワトソンを深く知るファンの人はこの「まいじつ」に書かれた内容もすぐにデタラメだと理解できたでしょう。けれども、俳優をよく知らない人は騙されてしまうかもしれません。このように騙されやすい人を狙って作られた記事というものも大量に存在しており、ひとつひとつを見分けるにしても骨が折れます。

まずはメディアがコンプライアンスを厳守し、情報の内容に正確性を持たせ、責任を持つ必要があるでしょう。

エマ・ワトソンは過去にもネットで誹謗中傷を受けていました。企業が運営するメディアがその誹謗中傷に加担するようなことは絶対にあってはならないことです。誹謗中傷は犯罪です。名誉毀損に該当する場合は日本の法律だと「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」と定められています。企業などの法人の場合はもっと罪が重くなる可能性もじゅうぶんに考えられます。

インターネットやSNSでメディアに触れる際はその内容に注意をしましょう。


 

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